飲食店経営者がモバイルオーダーを自作した方法を完全紹介
最終更新日:
2024-07-14 18:51:40
モバイルオーダーを自作しました
私は飲食店を経営していますが、少ない人員で店舗運営をしていると注文業務に人手を取られてしまい、ホール業務や提供に遅れが出てしまうことに悩みました。
そこで、モバイルオーダーの導入を検討してみましたが、初期費用に10万円、さらに月額費用が2万円~3万円程度かかるらしく、小規模な飲食店にとってはあまりにも高過ぎました。
開店直後はどうしても経費がかさんで赤字になりがちなところで、さらにその月額費用まで支払うのは難しいと判断し、いっそスマホアプリとして自作することにチャレンジしました。
実際に一人で作ったモバイルオーダー
「QR注文くん」はGooglePlayで公開しているため、是非使ってみてください。
また、
オススメのモバイルオーダーや導入費用についてはこちらの記事で紹介しています。
「QR注文くん」はAndroidのスマホかタブレットで動かすことが可能です。
いきなり結論
私が自作した
モバイルオーダー「QR注文くん」は月額980円で公開しているため、それを使うのが一番楽なのは間違いありません。
ちなみに、何店舗に導入しても月額980円のままです。例えば、100店舗持っているチェーン店が導入しても、全体で合計980円で利用できます。
ただし、プログラミングやアプリ開発をやってみたいという方はこの記事で、モバイルオーダーを自作する方法を全て紹介しているため、是非自作にチャレンジしてみてください!
必要な手順
この記事では、下記の流れで必要な手順を説明します。
1:アプリのプラットフォームの選択
2:開発環境の準備
3:プログラミングの学習
4:必要な構成を考える
5:実際にコードを書く
6:実機テストする
多くのアプリやシステム開発に必要な手順と似ていることが分かります。
モバイルオーダーを自作する方法
1.アプリのプラットフォームを選択する
アプリを動かすためにはAndroid端末かiOS端末が必要です。
アプリをAppStoreやGooglePlayで公開するためには費用が必要となりますが、自分で使うだけであれば不要です。
私は、公開することを視野に入れていましたが、アプリ公開費用が安いのはGooglePlayであるということで、Androidアプリとして作成することにしました。
持っているPCがApple製のMacであればiOS、windowsであればAndroidというように選ぶことも可能です。
また、Android、iOS問わずに作れるflutterなどの開発方法もありますが、モバイルオーダーのように複雑な通信を行う場合であればそれぞれのOSごとにアプリを開発した方がいいでしょう。
2.開発環境の準備
必要なPCのスペック
アプリ開発はプログラミングを行う必要があるほか、PC上で仮想のスマホを動かしてテストしたり、画面のデザインやレイアウト配置を行う必要があります。
これにはかなりRAMを使用するため、低スペックなPCでは思うように開発できない可能性があります。
【必要なPCスペック】
・CPU: intel Core i7以上(第9世代の場合)
・RAM: 16GB以上
グラフィックカードなどはそれほど高性能である必要はありませんが、最低限上記のようなPCを準備しておきましょう。
価格コムによると
モバイルオーダーを自作するために必要なPCは16~20万円程度で購入することが可能です。
ソフトのインストール
PCを準備したら、Androidアプリ開発をするために
Android Studioというソフトをインストールする必要があります。
javaの開発環境を提供しているJet BrainのIntelliJ Ideaと使用感は同じです。
Android Studioでできること
Andorid Studioでは下記の機能があり、アプリのビジュアルから内部のプログラミングまで全て作成することが可能です。
・画面のレイアウト
・アイコンの作成
・プログラミング
・プログラムファイルのビルド
・仮想デバイスでのテスト
・実機でのテスト
・GooglePlayで公開するためのApp Bundleの作成
それでは実際にプログラミングしていきましょう。
3.アプリ開発のためのプログラミングの学習
多くの飲食店経営者は、プログラミングの知識がないと考えられるため、まずは必要なプログラミングの学習方法について紹介します。
javaを学習する
Androidアプリを自作するためには主にjava、またはkotlinを使用します。私の場合はjavaを使用しました。
javaの学習は書籍で行うのが最も安くて確実です。本に載っているコードを写す「写経」と呼ばれる学習方法が最も効率的です。
ここでは必要なjavaスキルが身につくオススメの本をいくつか紹介します。
・
あなうめ式java(
エムディエヌコーポレーション)
超初学者向けの本ですが、forループやif条件分岐などのプログラミングに共通する文法ルールを学ぶことができます。
・
スッキリ分かるjava(
インプレス)
java学習の定番です。分かりにくいオブジェクト指向をRPGのキャラクター作成の例を挙げながら分かりやすく説明しています。
・
プロになるjava(技術評論社)
実務のために必要となる知識が身につく本です。
これらの本を1ページ目から最後まで手を動かしながらこなせばモバイルオーダーを自作するために必要なjavaスキルが身につくでしょう。
Androidアプリを開発するためのコードの書き方を学ぶ
javaを学んでも、Androidアプリを開発するためにはAndroid独特のプログラミングが必要になります。
これは
Andorid APIと呼ばれるもので、アプリがインストールされているAndroid端末を操作するためのクラスなどがあります。
例えば、画像を保存したり、テキストを表示したり、データベースに保存したりするクラスです。
基本的なjavaの記述スキルがあればそれほど難しいものではありませんが、こちらも書籍での学習がオススメです。
・
はじめてのAndroidアプリ開発(秀和システム)
レイアウトからGPSの使い方、パーミッション要求までAndroidアプリを自作するために必要なことを網羅的に解説しています。
4.サーバー側のプログラミング学習
サーバー側とは?
多くのアプリは、「サーバークライアント方式」という通信を行っています。
モバイルオーダーの例では「飲食店側の端末」「お客様の端末」の2台が直接通信するのではなく「サーバー」というコンピューターがその2台の通信の仲介を行っています。
そのため、サーバーで動作するプログラムを書かなければいけませんが、普通「PHP」や「javascript」といった言語を使用します。
もちろん、javaでサーバーサイドのプログラミングを行うことはありますが、レンタルサーバーなどではjavaのサーバーサイド技術を使うことが禁止されている場合が多いため、自社でサーバを準備できる大規模なアプリでなければ使用する機会は少ないです。
他にも、サーバー側の動作を意識しない「サーバーレス」な開発も近年では増加しています。例えば、AWSやGCPといったクラウドサービスを利用する場合ですが、これらは別途学習が必要なため、ここではモバイルオーダーを自作する程度のサーバーサイドプログラミングであればより基本的なPHPで十分でしょう。
PHPを学習する
PHPは自作アプリだけでなくホームページ作成などでも使用される比較的簡単なサーバーサイドの言語です。
データベースの操作やファイルの作成などもできるため、モバイルオーダーを作るために必要な機能は揃っていると考えられます。
サーバー側で必要な機能
飲食店でモバイルオーダーを導入する場合、ただ注文を受け付けるだけではなく、メニューを保存したり、注文された個数、金額を保存したりと保存すべきデータがいくつかあります。
【メニューのデータ】
・金額
・メニューの名称
・サムネイル画像
・提供時間
・在庫数
・詳細説明
【テーブルのデータ】
・テーブル番号
・会計金額
・入店、退店の時間
・注文履歴
・提供、未提供の切り替え
以上のようなデータをサーバーに保存しておくことで、飲食店側がメニューの在庫数や価格を変更したり、そのデータをリアルタイムでお客様が参照できる仕組みになります。
5.その他最低限のプログラミング学習
お客様はスマホのブラウザでメニューを読み込み表示するため、ブラウザに情報を表示するためのHTMLやCSS、javascriptといった言語を学習する必要があります。
表示するだけならHTMLで十分ですが、ユーザーが使いやすいように装飾したり、注文内容を一時保存したりするためにはJavaScriptを使用しましょう。
また、データベースの操作にはSQLという短い命令文のようなものを覚える必要があります。
6.必要な構成を考える
これらのプログラミング言語をある程度扱えるようになり、Androidアプリを開発できるようになったらようやくモバイルオーダーの開発に取り掛かりることができます。
モバイルオーダーの仕組みはすでに説明した通り「来店客のスマホ」「それを繋ぐサーバー」「飲食店の端末」という3種類が相互に通信しあうというものです。そのため、各端末についてそれぞれ開発を行う必要があります。
以下に、それぞれ必要な機能を挙げました。
来店客のスマホ
・言語はHTMLなど
・注文用ホームページが表示される
・カテゴリを選択するとメニューが表示される
・メニューの個数を選ぶとカートに追加される
・送信すると、カートの注文が送られる
・注文履歴を確認して金額などを確認できる
サーバー
・メニューを保存する
・注文を保存する
・変更履歴などの保存
・注文時の通知
・ホームページの表示
・管理画面の表示
店舗側の端末
・現在の注文状況の取得
・メニューの編集や登録
・履歴の取得
・注文の通知
・金額の計算
7.実際にコードを書く
独学でプログラミングを行うコツ
まずは「これがなければモバイルオーダーとは呼べない」という最低限のシステムをざっくりと作りましょう。
8:2の法則とは、大まかな8割を完成させるのに全体の2割の時間がかかり、残りの2割を仕上げるのに8割の時間がかかるという諺ですが、システム構築の流れもこの法則に従うことが多いです。
実際のところ、アプリを開発するだけならそれほど時間はかかりません。QR注文くんの場合でも、1か月程度で概ね完成していました。しかし、テスト導入しているうちに感熱紙対応が必要になったり、エラーが発生したりという「残りの2割」の部分に数か月程度かかりました。
そのため、まずはデザインや細かい機能は後回しにして、最低限メニューを保存して表示、オーダー送信ができる機能を実装していくべきでしょう。
学習を含めて目安は1~2年程度
プログラミング習得に必要な学習時間は実務などのコードライティングを含めて1000時間程度必要であると言われています。
そのため、毎日3時間学習して1年間あればプログラミング習得が可能であると考えられます。
私の経験でも、毎日6~10時間書籍で学習したり、実際にテストアプリを作ったりして半年ほどで開発のスキル自体は身に付いたため、それほど長期間の学習は必要ありませんが、
飲食店経営者がプログラミングスキルを身につけるためには店のアイドルタイムや閉店後の時間を活用するのが近道になると考えられます。
また、QR注文くんの開発にはテスト、リリースを含めて4か月程度かかったことから、早ければ1年以内、遅くても2年間コンスタントに学習と開発を行えば可能であると考えられます。
コードの書き方は人それぞれ
実はプログラミングしたコードには著作権が認められています。
つまり、同じモバイルオーダーというシステムであっても、それを実現するためにどのようなコードを書くかということは人それぞれであるということです。
コードを書く人の技術や処理の仕方によって、サーバーへの負荷や処理速度が変わってきます。もし、サーバーへの負荷が高い処理しか実装できなければ、
その分サーバーの能力を上げるなど、費用がかかったり、多くのアクセスに耐えられなかったりするという問題が発生する可能性があります。
どのようにメニューを登録したり、通知を送ったりすれば効率的に実装できるかを考えるのがコツです。
8.テストと改善
飲食店に導入するモバイルオーダーなど、業務に関わるものであれば、エラーが頻発するのは好ましくありません。
忙しい時にシステムが動かなくなったのでは、円滑な運営ができなくなってしまいます。
そのため、まずは実機を準備して自店舗へ導入してみて、一か月ほどちゃんと使えるかどうかをテストしましょう。
その中で、追加で欲しい機能などのアイデアが出てきたらメモしておき、もし注文受付ができなかったり、印刷が急にできなくなるなどの不具合があれば
すぐにAndroidStudioにスマホを接続し、ログを確認して不具合の原因を究明します。
エラーログが出ていればその箇所のコーディングを見直し、エラーログが出ていなければ、そもそも動作していない可能性を疑います。
その他にも、公にリリースしたアプリであれば、細かな修正など定期的なアップデートが必要になります。
タダ同然で公開しました
知識ゼロから自作は難しい
今回は、プログラミング経験のない飲食店経営者がモバイルオーダーを自店舗用に自作する方法を紹介しました。
恐らく、ここまで読んで、自分で作るくらいなら買った方が楽だと思われた方も少なくないと考えられます。
しかし、普通の企業が提供するモバイルオーダーは初期費用だけでも15万円、月額費用2万円、さらに決済手数料までかかります。
モバイルオーダーを諦めて、コツコツ人件費をかけて営業しようかと思ったあなたに!
タダ同然で公開しています
そんな方が楽をできるように
私が既に作った「QR注文くん」をGooglePlayで公開しています。他のアプリでも無料の場合かなり制限が多く、このアプリは機能の制約がないことを考えれば確実に一番安いので是非使ってみてください。
ちなみに何店舗で導入しても一律で980円です。ラーメンを奢る位の感覚で導入していただければ励みになります。
QR注文くんは、今回紹介したような手順を踏んで作成されている業務システムで、実際に自分が経営する飲食店に導入して必要な機能を取り入れました。
例えば、キッチンプリンター対応はもちろん、メニューのリアルタイム編集、提供時間の設定など、大変役に立っています。
また、注文が手軽にできるため、「もう一杯」「もう一品」という追加オーダーが増加しました。
他にも、ハッピーアワーなど、何度も注文することが前提のイベントを行うこともでき、客単価はかなり向上しました。
もちろん、この記事を読めば自作することは可能ですので、興味を持った方は是非トライしてみてください!